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最近はこれが1番楽しみな時間なの、とこの間奥さんから聞かされた時はとても嬉しかった。 それから2時間ほど、いつものように間に雑談を挟みながら過ごし、昼のピークの少し前に「そろそろ帰るわね」と、帰り支度を始める。 お会計の際に「良かったら」と小ぶりな包みを差し出すと、真田さんは「なあに?」と不思議そうに中身を尋ねた。 「今日は11月22日「いい夫婦の日」なんです」 私が説明を始めると「それで?」と言いたげな顔で続きを待っている。私はそのまま説明を続ける。 「真田さんご夫婦は私達にとって理想のご夫婦なんです。勝手にこんなこと言われても困ってしまうかも知れませんけど、いつもお店に来てくれる素敵なご夫婦へのちょっとしたサービスなので受け取って頂けますか?」 そう言って包みを差し出すと驚いたような表情の後「あらあら、どうしましょ」なんて言いながらいつもの笑顔になる。 「そんな嬉しいこと言われちゃったら断るなんてとてもじゃないけど出来ないわ。ねえ、あなた?」 旦那さんも笑顔で頷いてくれる。 「よかった。これ、真田さんご夫婦の好みに合わせてブレンドした紅茶なんです。」     
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