2人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ
商店街のメイン通りの路地に、それはひらりと揺れていた。私は立ち止まり、路地をじっと覗き込んだ。
ひらひらしていたのは、店頭に吊るされたビニール製のモビールだった。吹き流しみたいな細長い形のモビールが、おいで、おいでとひらひら揺れる。私の足が、ふら、と路地に入り込んだ。
モビールは幼児用クレヨンの十二色を律儀に全部使ったような色使いをしていた。赤系とか青系とか、そんなこだわりのある配色センスはまるで感じられない。
そのひらひら風に流れる十二色の中に、スチール製の薄っぺらい看板が一緒にぶら下がっていた。風にくるくるくるくる回るものだから、店名を読み取るまでに酔ってしまった。
やっとのことで判読できた店名は、こう記されていた。
『アフロ美容室』
どう考えてもアフロ一択。
どう考えてもお客さんみんなアフロ。
よくよく見ると、スチール製の看板はアフロを模したもこもこ形だった。
そんなにアフロって需要があるのかな? 首を傾げたものの、自分の生活する範囲に、ちょっとウキウキするものがあるというのは悪くなかった。
「私のアパートの近所、『アフロ美容室』っていうお店があるんですよ」
これだけで、二分くらいは会話が続く気がする。
最初のコメントを投稿しよう!