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男女はまるで同じ格好をしていた。シルク素材の黒シャツに真っ赤なパンタロン。腰回りや手首に着けたシャラシャラした飾りには色とりどりの天然石があしらわれており、そしてヘアスタイルはもちろんアフロ。ドレッド風ではなく、頭の上にマリモが乗っかっているような、まん丸アフロ。アフロと言えば、のアフロ。
ああ。私は感動した。
そう。これが理想のアフロ。
男女が立ちすくむ私の周囲を叫びながらぐるぐる回る。
「長さ!」
「長さ!」
「ソウル!」
「ソウル!」
「オール……」
ぴた、と男の足が止まった。同時に女も足を止める。ひえええっ。私は店の中心ですくみ上った。
「いけません! オールクリアじゃない!」
「オールクリアじゃない!」
「髪質、毛量、長さ! どれもアフロなのに」
「アフロなのに!」
アフロなのに?
「ソウルが足りなぁいいいい!」
「ソウルが足りなぁいいいい!」
ぽかんとする私の鼻先にビシィ! と指を突き付け、男が叫んだ。
「人にはそれぞれ理想のアフロ期があるのです。今、あなたはその時じゃないっ」
「あふろき」
「またこの店が見えた時にいらっしゃい! その時こそがあなたの、アフロっ、期っ」
私は必死に首を振った。
「あのっ。今日同窓会があるんですっ、絶対に、絶対にアフロで行きたいんですっ」
真剣な私の顔を、男女が黙って見つめる。もっこもこのアフロヘアに、ミラーボールの光の粒が降りかかる。
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