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ロットで埋め尽くされた頭に、じゃぶじゃぶじゃぶじゃぶ赤い液体、黄色い液体、緑の液体がかけられ、そのたびにもこもこカプセルで温められた。熱い。ぬくい。次第に、卵の中で孵化を待つひなの気持ちになってきた。
私はこれから生まれるのか。
それとも、私の中から何かが生まれるのか。
やっとのことでカプセルを外されると、ほっかほかに蒸し上がった私の頭が現れた。それをしばし見つめていたアフロ男が、傍らに立つアフロ女に目配せした。
「どうだいスカリー」
「悪くないわモルダー」
おお。私はちょっと感動した。彼女はアフロ男のサポートに徹していると見えて、ここぞという時は判断の可否を委ねられている。二人は対等なのだ。素敵。
男がにやりと笑った。
「OK! アフロ上等!」
ぱさ、と頭に何か被せられた。視界が覆われる。えっ。私はたじろぎ、身体を硬直させた。
薄暗い視界に光が走る。ミラーボールのちらちらした光の粉。もしや。私は息を呑んだ。
「レッツ! ボォオオオン!」
鐘の音か。英語のbornか。それともアフロの弾ける音か。
ボォオオオンという声とともに視界が開けた。……あ。私は目を見張った。
鏡の中に、まん丸いアフロヘアー姿の自分がいる。腕のいい植木屋さんに剪定してもらったような、可愛いマリモのような。完璧な丸みを持ったアフロヘアー。
なぜか泣きそうになった。私、頭に一つのコスモを抱いている。
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