アフロ☆美容室

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 阿以君はあの手の中に積み重ねた自分を抱えている。そうして今。今、この時も自分を刻み続けているのだ。  無意味なものなんて何もない。  すべての道は――  すべての道は、自分に通じている!  気付くと駆け出していた。ステージに飛び乗り、見よう見真似でギターを抱える。  するとどうだ。  私の手にもしっくり馴染むギターが見えた。音楽に合わせ指を動かすと、ビートがぎゅんぎゅんと身体中に響いた。驚いた顔をした阿以君が、にっと笑う。 「アフロ!」  彼が叫んだ。会場から「アフロ!」という声が返る。  ビートが弾ける。私と阿以君の足がいっせいに跳ね上がる。 「アフロ!」 「アフロ!」  最初はぱらぱらとしていた声が、二人の空気演奏の勢いに乗り、どんどん増幅していく。私はまん丸のアフロを揺らし、空気ギターをかき鳴らした。ギュイィイイイン。 「アフロ!」 「アフロ!」 「阿以!」 「ウエオ!」 「阿以! ウエオ!」 「あいうえお!」  弾けた。アリ! アリアリ、これもアリ! その一体感が瞬く間に宴会場を包み、全員がステージ前に駆け寄って跳ねて踊り出した。阿以君の笑顔がきらきら輝いた。汗が飛び散る。なぜか、目からも汗をかいているように見えた。  阿以君の真似をして大きく背を反らせてみた。ぼきぼきごげげ。背骨と腰がヘンな音を響かせる。けれど私は楽しくて、嬉しくて、全然気にならない。 「アフロ!」  叫んだ。 「お前だよ!」  阿以君が返す。  そうだ。  私はアフロだ。
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