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演奏後、私は同窓生たちにいっせいに周囲を取り巻かれた。
「どうしてアフロにしたの?」
「可愛い! アフロいいな」
「すっごい素敵だった、アフロ楽しそう!」
「アフロいいな、アフロ!」
仕事は? 結婚は? 誰にも訊かれなかった。
なぜアフロなの。
どこでアフロなの。
アフロってなんなの。
私ってなんなの。
あー答えられない。それが答えだった。
だけど、明日には明日のアフロがある。明日には明日の私がいる
「荻野目さん」
声をかけられた。阿以君が火照りの残る顔つきで歩み寄ってくる。
「ありがと。渡辺も喜んでた。盛り上がったって。あいつ、俺にはエアかよ! て散々渋ってたからさ。実物を弾け! て」
そう言うと阿以君は頭をかいた。えへへ、とまたちょっと乾いた笑顔を見せる。
「なんも成してないって思ったからさ。俺、何ものにも成ってないなーって」
「……」
「十五年かーって。ヤッベーなって。きっと今日も明日も明後日もずっと思ってると思う。苦しいし、うんざりする」
「すべての道は自分に通じるよ。阿以君」
はた、と阿以君が私を見た。
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