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唇の両脇、縦にうっすら走る皮膚の窪み。顔の上で光陰矢のごとし!
なんだこれ。なんだこれ。
私はパニックになった。
何も変わっていないはずなのに! なぜ? なぜ、身体だけ変わる?
「ひぃっ」
頬に両手をあて、むにぃっと引っ張り上げた。ほうれい線が消える。代わりに、カエルみたいな私の顔が映る。
「ほうれい線っほうれい線っ、消えろほうれい線っ」
念じた。呪文。けれど指を放すと、ほうれい線はちんまりと私の顔にシュプールを描く。
ほうれい線前。ほうれい線後。
女には二種類しかないと気付いた。
ほうれい線前! ほうれい線後! 私はすでにほうれい線後でした! いつの間に!
うわーっと頭を抱えてしまった。
変わっていないと思うのは傲慢だった。時間はただただ過ぎていく。世界は変化という一頭の巨大生物だ。
私は本物のくたくたトイになる。
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