アフロ☆美容室

7/27

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ
 とぼとぼと古和毬丘(こわいがおか)三丁目商店街の通りを歩く。個人店が多く立ち並ぶ商店街は小ぢんまりとしている。けれど小さい店々がキュッとはめ込まれた佇まいは、子供が想像する『町のお店屋さん』のようで収まりがいい。  土曜日の朝十時。商店街は通り全体がまだ眠たげだ。私はいつもの鼠色のパンツスーツを着て、電車で片道三時間の実家に帰省すべく最寄り駅へと向かっていた。  今日は花盛高校同窓会だ。母から転送されてきた同窓会案内を前に数日悩んだ私は、結局出席することにした。会の開始は夜の六時からだが、早めに行って実家に立ち寄る予定なのだ。  同窓会なんぞ催したがるのは人生の勝ち組に決まっている。と思っていたら、当番制だったとは。母の言うとおり、今年度は私の卒業した学年が幹事だった。  卒業生全員に案内を送り、地元ホテルの宴会場を借り切って年に一度催される同窓会。創立二十年になる花盛高校の卒業生は果たして何人なのか。毎年毎年三百人くらいは増えているはずだ。  とはいえ、大体は幹事をする学年の卒業生や先生がおもに集まるものらしい。同窓会。考えてみれば、つくづく不思議な催しだ。  三十三歳。もしや、ほうれい線前とほうれい線後に分かたれる微妙な年頃なのではないか。それを確認し合って、陣地取りをする儀式なのだろうか。  ひゅうう、と風が私の足元を吹き抜ける。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加