アフロ☆美容室

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 いつの間にかほうれい線後の女になっていたことも衝撃だったが。  無為に十五年という月日を過ごしてしまった自分に驚いていた。なんで? なんでこんな長い時間、私は何もせずにいられたのだ。眠っていたのか。実は起きていたつもりで、こんこんと寝ていたのでは。  ふと、自分の姿を見下ろす。  鼠色のパンツスーツ。違う色を着てみたいと思ったことは一度もなかった。体型もあまり変わらないから、買い直したのはもう五年も前になる。  ちなみに予備のパンツスーツも鼠色。冬、中に着用するタートルネックも鼠色。オフィスで羽織るカーディガンも、家で着るスウェットの上下も鼠鼠鼠色。 「なんっっっだこれ、私は鼠か? 鼠なのか?」  知らず歯ぎしりしていた。旧友たちに再会するというのに。この色のこの服しかない。  とはいえ、十五年という時の流れを無駄に過ごし、ほうれい線という川を渡った私にはふさわしい服装にも思えるのだ。はぁあ、とため息をついた時だった。 「荻野目さん?」  名を呼ばれた。  荻野目。誰だ。私だ。  東京の空の下、職場以外で自分の名を呼ばれるとは。私は驚いて振り返った。そしてもっと驚いた。  道の真ん中にヘンな物体が立っている。……いや、正確には全身をピッタピタのポリエステル100%赤色レンジャースーツで覆ったヒト型のもの。被ったヘルメット、スーツの肩には茶色いイガイガが付いている。肩やもみあげからウニが生えてるみたいだ。 「……コワイガー」
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