4章

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「なんで俺が犯人なんだ」 「それはこっちの台詞です。なんで私が犯人なのよ」 両者一歩も引かずに膠着状態が続く。 そこにやって来たのが警部だった。 警部は二人を見るや否や顔をひきつらせた。 「なにをしているんだ」 二人を引き離すように警部は聞いた。 「犯人にされかけているんです。助けて」 「根拠もないのに犯人にされかけました」 二人は口々にいった。 「事情は分かった。捜査をするからとりあえず黙ってくれ」 警部は二人を追い出した。 遠葉は機嫌の悪いまま背を壁に預けた。 水俣はというと壁を背にしゃがみこんだ。 「おい。なんで俺が犯人にされなきゃならないんだ」 「事件現場に犯人が戻ってくる可能性がある。という観点から見れば貴方も立派な犯罪者」 「俺は立派な刑事だっ」 「威勢だけはいいんだね」 「うるさい」 「私が犯人ではない理由は分かったの?」 水俣が溜め息を吐き出した。 「まだ私が犯人だと言うの?」 遠葉は苛々と聞き返す。 「現場にいたんだぞ」 「とんでもない勘違いだわ。私をよく見てよ。返り血を浴びていないでしょう?」 全く答えを動かさない水俣に遠葉はいい放つ。 ここまで観察力がない刑事と言うのも珍しい。 「カッパでも着てたんだろ」 「どうやってカッパを処分するのよ?」 「切り刻んで排水溝かトイレに流す」 「無理よ。そんなの。物理的に!」 大きく息を吐いて遠葉は叫んでいた。 推理までもが雑すぎる。
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