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いや、吸い出されているのは毒だけではないかもしれない。
「ひっ……あ……」
全身の肌にぞわりと鳥肌が立った。熱源を探り当てられたみたいに、全身がかっと熱くなる。
明松の唇が離れてからも、その熱は治まらなかった。むしろますます強くなり、中から迪の身体を焦がす。
「迪」
耳元でいきなり名前を呼ばれた。
大きな声ではない。囁きに近い。その声が、迪、みち、ミチ、と反響を繰り返しながら、身体の内側を伝い落ちていく。
「結界を壊した責任を取ってもらおうか」
言葉の内容よりも先に、その息遣いが耳を刺激する。全身が鼓膜になったかのように、明松の声に合わせて細かく震える。
「責任、って」
自分の身体は一体どうしてしまったんだろう。混乱したまま、迪は必死に問い返す。
「今から結界を張り直す。そのために、『閘』としてのお前のその能力を借りる」
「ひのくち……?」
「今だけ、俺の霊力の器となれ」
明松の大きな手が、迪のつぶやきを封じるように細い顎を鷲掴みにしてくる。
「あ」
咄嗟に目をつむる暇さえなかった。
上から覆い被さるようにして、明松の口に唇を塞がれてしまう。
「……っ!」
唇が触れ合った瞬間から、怒涛のような感覚に襲われた。
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