Chapter7

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 アザミの様子を見たクラッドは赤い瞳を細めるも、大丈夫だ、と頷いた。 『こんなんで死ぬ男じゃない』 『でも、心臓に、』 『とにかく、一旦俺のバーに運ぶぞ』  ゼン、手伝え。  そう言い、クラッドはアザミの脚の方を持とうとするが。 『ゼン?』 『・・・殺してやる』  ゼンはゆらりと立ち上がり、サバイバルナイフを強く握る。  その赤い瞳が見るは政府だ。アザミの仇を討ちに行こうとしているのだろう。  だがあのノアの相手をするのはゼンでも無理だ。このまま怒りに任せてしまえばゼンが死んでしまう。  セツナが慌ててゼンッ、と名前を呼び腕を伸ばそうとするが、スルリと抜けて行ってしまう。 『ゼンッ!行ったら―――』  ダメだ、と言う前にバンっと大きな音が響いた。  振り返れば、拳銃をゼンに向けて撃ったクラッドが。  彼が己の得物を握るのを初めて見た。 『ゼン、お前が行けばアザミは死ぬ。どうする』 『・・・・』 『アザミも殺して、お前も死ぬか?』 『・・・それもいいね』  拳銃の弾を避けたゼンは、クラッドの方に視線を向けた。だが殺気を含んだ瞳は驚愕に見開かれる。 『じゃぁ、これでも行くのか』 『セツナッ!』  セツナの頭に拳銃を向けるクラッド。  それに対しセツナは逃げることはせず、それどころかクラッドの拳銃を自分から頭に付けていた。 『ノアの所に行くんだったら、俺は死ぬ』 『な、んで』 『ノアの所に行ったら、ゼンが死ぬから』  そんなの俺には耐えられない。 『ゼンがいない世界なんていらない。だからそうなる前に、俺が先に死んでやる』  セツナは小さな声で『ごめん』と謝り、クラッドの拳銃をもぎ取って引き金に指を掛ける。そしてそのまま引こうとすれば、ゼンは焦ったように手を伸ばし、セツナを抱きしめた。 『分かった、分かったから。俺は行かない。アザミも殺さないし俺も死なない。だからセツナ、死なないで』 『うん』  セツナは頷き、拳銃を持つ方の腕でゼンを抱きしめ返し。  そしてアザミはバーに運ばれ治療を受け、一命を取り留めたのであった。 「休むだけって、そんなの信じるわけないじゃん!」  どんだけ最強なの、初代ブラックって!  苛立ちを隠さずサバイバルナイフを回すゼンに向かってリオが「ゼン、はやとちり」と笑う。 「こンの小娘、やっぱ死んどけばよかったのに」 「おいゼン、いい加減にしろ」 「だってセツナぁ」
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