3人が本棚に入れています
本棚に追加
アザミの様子を見たクラッドは赤い瞳を細めるも、大丈夫だ、と頷いた。
『こんなんで死ぬ男じゃない』
『でも、心臓に、』
『とにかく、一旦俺のバーに運ぶぞ』
ゼン、手伝え。
そう言い、クラッドはアザミの脚の方を持とうとするが。
『ゼン?』
『・・・殺してやる』
ゼンはゆらりと立ち上がり、サバイバルナイフを強く握る。
その赤い瞳が見るは政府だ。アザミの仇を討ちに行こうとしているのだろう。
だがあのノアの相手をするのはゼンでも無理だ。このまま怒りに任せてしまえばゼンが死んでしまう。
セツナが慌ててゼンッ、と名前を呼び腕を伸ばそうとするが、スルリと抜けて行ってしまう。
『ゼンッ!行ったら―――』
ダメだ、と言う前にバンっと大きな音が響いた。
振り返れば、拳銃をゼンに向けて撃ったクラッドが。
彼が己の得物を握るのを初めて見た。
『ゼン、お前が行けばアザミは死ぬ。どうする』
『・・・・』
『アザミも殺して、お前も死ぬか?』
『・・・それもいいね』
拳銃の弾を避けたゼンは、クラッドの方に視線を向けた。だが殺気を含んだ瞳は驚愕に見開かれる。
『じゃぁ、これでも行くのか』
『セツナッ!』
セツナの頭に拳銃を向けるクラッド。
それに対しセツナは逃げることはせず、それどころかクラッドの拳銃を自分から頭に付けていた。
『ノアの所に行くんだったら、俺は死ぬ』
『な、んで』
『ノアの所に行ったら、ゼンが死ぬから』
そんなの俺には耐えられない。
『ゼンがいない世界なんていらない。だからそうなる前に、俺が先に死んでやる』
セツナは小さな声で『ごめん』と謝り、クラッドの拳銃をもぎ取って引き金に指を掛ける。そしてそのまま引こうとすれば、ゼンは焦ったように手を伸ばし、セツナを抱きしめた。
『分かった、分かったから。俺は行かない。アザミも殺さないし俺も死なない。だからセツナ、死なないで』
『うん』
セツナは頷き、拳銃を持つ方の腕でゼンを抱きしめ返し。
そしてアザミはバーに運ばれ治療を受け、一命を取り留めたのであった。
「休むだけって、そんなの信じるわけないじゃん!」
どんだけ最強なの、初代ブラックって!
苛立ちを隠さずサバイバルナイフを回すゼンに向かってリオが「ゼン、はやとちり」と笑う。
「こンの小娘、やっぱ死んどけばよかったのに」
「おいゼン、いい加減にしろ」
「だってセツナぁ」
最初のコメントを投稿しよう!