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「久しいな、ノア。そんな高みで見物か」
「ゲームの王様は最後の最後にならないと動かないのが普通だと思うが」
なぁ―――?
「―――兄さん」
サラ、と。風で白い髪が揺らしながらノアは微笑んだ
「「兄さん?」」
セツナとゼンは声を揃えて言う。
確かに今、ノアはアザミのことを〝兄さん〟と呼んだ。
「ホント、兄さんは何にも説明していないんだなぁ」
クエスチョンマークを浮かべている二人にクスクス笑いながらノアは言う。
「時に多すぎる情報は混乱を招くからな―――なぁ、セツナ」
「・・・・」
一瞬何のことかと思ったが、すぐに両親のことだと理解した。
きっとマスターが両親についてセツナに話したことをアザミに伝えたのだろう。だから今ここでセツナにそう話を振ったに違いない。
セツナは何も言わずにフイと横を向けば、アザミが苦笑したのが気配で伝わる。
「けれど知っていても損はない情報だろう?」
その様子を見ていたノアだったが、特に気にした様子もなく両手を広げ、笑った。
「教えてやろう、兄さんが作りしB・Sよ」
ノアは言う。
「私たちは戦争があった時に最初に作られたブラック、人間兵器なのだよ」
~ * ~
今から随分と前のこと。
この世界に大規模な戦争があった。
恵まれている筈の大地に穴を開け死者を多く出し続ける戦争は治まる気配を見せず、まるで常に火に油を注いでいるかのような状態。もうなぜ戦争が始まったかなどどうでもよくなってしまっていた。
討たれる前に討つ。ただそれだけ。終わりの見えない戦は人間の心を蝕み、だんだんと狂わせていった。
そしてついに人間を戦闘機として使う人間兵器――――人間の遺伝子の組み換えによって作られたブラックが誕生したのである。
~ * ~
「だからいやに化け物すぎるわけだな、おい」
その声に振り返れば、リオを背負ったカゲミナがそこにいた。
「カゲミナ!」
「カゲミナじゃん」
「よぉてめぇら、グレイと戦ったクセに元気してんじゃねぇか」
ゆっくりとこちらに歩いてくるカゲミナが眉間にシワを寄せれば、ゼンは「当たり前、カゲミナより俺ら強いもん」と笑った。
「で、リオは死んだわけ?」
「死んでねぇよ。血ぃ流し過ぎて気を失っただけだ」
「そうか」
セツナはほっと息をつく。
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