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外の雪景色とも相まって、まるで窓際に天使が舞い降りたかのようだった。遠目から見るだけでは飽き足らず、気がつくと僕は椅子から立ち上がり窓際へと歩いていた。ドールを囲む女子の集団には、件の折原美由紀も含まれていた。
「……僕も見ていい?」
その女子、確か佐藤や田中といったありふれた苗字だったと思う。彼女は普段全く交流の無い僕から話しかけれたことに驚いて目を丸くし、それでも「いいよ」と声をかけてくれた。周りの女子もいぶかしそうな目つきで僕を睨む。しかし、そんなことを気にする余裕はなかった。
その人形は僕の知っていた人形とは全く違っていた。透き通る瞳、うっすらと赤みが差した頬、艶やかな唇、柔らかそうな肌。やや茶色がかった髪はゆったりと肩にかかっている。青いワンピースを着ており、そこから飛び出した肌は酷く艶めかしかった。フィギュアの女の子であろうと目を逸らしていた僕が、そのドールからは反対に全く目を離すことができなかった。どこか儚げに感じる存在は形容できない美であり、性的な魅力とは全く異なっていた。
チャイムが鳴り授業が始まった後も、僕の胸はドキドキと高鳴ったままであった。いつもは得意な数学も、今日は数式が全く頭に入ってこない。その日は上の空のまま帰りのHRまで過ごし、下校後すぐにドールについて調べまわったのを今でも覚えている。
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