■二.

1/3
前へ
/28ページ
次へ

■二.

 たとえ3兆の組み合わせでも「折原美由紀」の不思議な魅力は、なかなか表現することができなかった。これだと決めて実店舗でシミュレートしても、やはり醸し出す雰囲気が違う。どんな化粧を施しても、それは変わらなかった。最近は原因もわかってきて、おそらくしっくりくる頭部パーツが存在しないのだ。化粧や瞳でカバーできる部分はあっても、パーツの配置や骨格は頭部固有のものだ。1点モノのドールの製作は1体15万円以上かかる。冬休みに必死で溜めた貯金を全て切り崩しても1体が限界であり、だからこそ妥協せず最高のドールを造り上げたい。  ――そんな時、その通販サイトを見つけたのは本当に偶然だった。深夜、ドール関係の掲示板で自作の頭部パーツを眠い目を擦りながら眺めていたとき、たまたまスクロール中に左ボタンを押してしまったのだ。すると何もなかったはずなのに、新しいWebページの読み込みが始まった。いわゆる隠しリンクというやつである、最近はめっきり数も減ってきたが、こういったマニアックなサイトには今でもごくたまに残っている。  リンク先はとてもシンプルで、真っ黒な背景に白文字で次のように書かれていた。 『リアルな頭部パーツをお探しの方』     
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加