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馬鹿がつくほど生真面目で、完璧主義で、優柔不断で、臆病。それが狭山を表す言葉だ。人の目を気にして何も自己主張できない。狭山は馬鹿にされるか、空気のように無視をされるか。そんな存在だ。誰の目から見たって、ただ弱いだけの狭山。そして、それに苦しんでいるのを小沢だけが知っていた。なんていったって、二人の出会いは赤ん坊の頃で、親の次に付き合いの長い間柄だ。互いに相手のことを、よく分かっている。 弱くて仕方ないくせに、人一倍プライドが高くて、自分の弱さを素直に受け入れられない。だからこそ、溜まりに溜まった不満を解消する術を知らず、狭山は余計に苦しんで、更に弱くなっていく。 狭山は本当に、弱くて馬鹿で、可哀想な男だ。 狭山の中で蓄積されたどす黒い感情は、既に狭山の意思を支配し始めている。衝動は、もう抑えられない。小沢を殴り、蹴り、暴力の限りを尽くすことを余儀なくされている。そうしてまた、弱くて仕方ない自分を認識させられて絶望する。小沢への贖罪と後悔に顔を歪ませるのだ。 けれど、その衝動はすべて小沢に向かっている。 狭山は小沢にしか暴力を振るえない。 それが、小沢には嬉しくて仕方なかった。 弱くて生真面目なこの男は、きっと小沢への後悔を一生忘れない。否、忘れられない。 本当は、汚い言葉で罵られるのも、殴られ蹴られるのも、苦痛だけのセックスも、どれも好きではない。しかし、それらすべてが狭山の誰にも見せられない弱さであることと、それらによって狭山が後悔すること。そのことが小沢の表情を緩めさせた。 いっそ手足の一本くらい、狭山の手で不能にしてくれて構わない。 そうすれば、狭山は小沢から離れられなくなるだろうから。
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