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会計を済ませ、病院を出る。いちいち五月蠅い医者だったなと皺くちゃな顔を思い出しながら看板を見やる。次になにかあった時には、もうここに来ない方がいいと思いつつ歩き出した。五月蠅い医者だったが、年を重ね経験を積んでいるせいか感が良すぎて困る。咄嗟にアルコールのせいだと嘘を言ったが、本当に信じてもらえたかはわからない。もしも、次にどこか怪我をして痣だらけの体を見られたら、きっとあの医者は核心をついてくるだろう。
そんなことを考えながら大通りに出ると、向かいからくるタクシーへ停まるように手を挙げた。乗り込んで自宅の住所を告げると、細心の注意を払って椅子に座る。ズキっと痛みが走った。
これでまた一つ自分が通えない病院が増えたと、小沢は痛みを感じながら思った。
おそらく肋に罅が入ったのは、一昨日。土曜の夜だ。
その日、いつにもまして狭山は荒れていた。罵倒から始まり、平手打ち、拳での殴打に鳩尾への容赦ない蹴り。せっかく営業で食べてきた高級店の料理が、見事に床へぶちまけられてしまった。鮑がすげぇうまかったのに、と今になってとても残念に思う。
いつもだったら他人にばれるような場所は痛めつけないのに、何度も頬を叩かれ、口の端が切れてじくじくと未だに痛んだ。
そうして、そのまま服を剥ぎ取られ、強姦まがいの痛々しいセックスになだれ込んだ。どうせ慣らしもしないだろうと思い、自分で準備しておいたのがせめてもの救いだった。そうでなければ、もっと酷いことになっていた。慣らしてさえ、シーツは赤く染まっていた。
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