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不意に、翌日の狭山を思い出す。
目が覚めた時、狭山はソファの上に体育座りで震えていた。見もしないバラエティー番組を流したまま、ただずっと指が白くなるまで力を入れて身動き一つできずにいた。青ざめたその顔は、暴力を振るわれた小沢よりも滑稽だった。
怠い体を引きずって寝室から出てきた小沢に気づくと、狭山はまるで幽霊でも見るかのようにぎょっと目を剥き、その反動でソファから滑り落ちていた。おかしくて笑おうとしたが、ズキズキと痛む体にうまく笑えなかった。わなわなと唇を震わして、狭山は小さく掠れた声で、謝罪の言葉を告げた。
いつもと同じ光景だ。
「ごめん、ごめん」と泣きながら謝る姿に、小沢はほくそ笑んだ。口の傷が痛んだが、それよりも感情の方が勝っていた。
小沢はこの瞬間が大好きだった。
青ざめ、後悔に顔を歪ませる狭山の表情は最高だった。
一番好きなのは、自分に暴力を振るった直後の顔だ。一瞬、我に返り困惑したようなあの顔がとても好きだった。
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