1

8/9

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
 千代田区の高級マンション。その目の前に、黒塗りの車が止まった。開いたドアから黒服の男が出てきて、高級感漂うグレーのスーツを纏った初老の男が続く。その後ろから更に黒服。走り去る車を見送ることもなく、彼らはマンションの入り口に向かう。  どこかで火事があったのか、消防車のサイレンが聞こえてきた。音の大きさと漏れ見える赤い光からして、一本隣の道を走っているらしい。意外と近いな、と、三人は音の聞こえる方に僅かに顔を向け、それぞれがそんな感想を持つ。  次の瞬間。黒服の内の一人が、突然倒れ込んだ。 「な……」  もう一人が銃を取り出すが、構える前にこちらも倒れる。ただ一人状況を理解していないスーツの男が漸く振り向いたころには、目の前にはフードを被った見知らぬ男だけが立っていた。 「な、何者だお前!?」  男はフードの下から鋭い眼光を向けて、一歩踏み出す。それに合わせてスーツの男は一歩下がる。 「ひっ……」     
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加