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一人の少年が夕暮れの路地を歩いていた。もっと早く帰るつもりでいたのだが友人の家で遊んでいたゲームに熱中しすぎてこんな時間になってしまった。
最近この小学校区内で不審者情報のメールが回覧されている。学校からも母親からも注意を受けていた。
空はまだぼんやりと明るいが周囲は薄暗くなってきている。
少年は足を速めた。
等間隔に並ぶ電柱の街灯が次々と点灯し始め、ブロック塀に鈍い光を落とす。
吐き気をもよおすような臭いがどこからか漂ってきた。死んだ動物の臭い? そう思った時、電柱の陰に女が立っていることに気付き、心臓の鼓動が激しく高鳴った。
臭いが一層きつくなり、嘔吐くのを我慢しながら気付かないふりをして足早に通り過ぎる。
「ぼうや」
後ろから聞こえてきた女の声は首筋の産毛が逆立つほど異様な響きをしていた。
少年は振り返らず歩を速めた。足音が後ろから付いてくる。
「ついて来ないでくださいっ」
真後ろに足音が近づいてきたところで少年は振り返って抗議した。
少年の顔をじっと見つめる女の顔が街灯の光に照らされている。
「わたしきれい?」
そう言って笑うと女の両頬が裂けぐちゃぐちゃに爛れた肉から血膿が糸を引いて落ちた。
逃げることも忘れ呆然と突っ立った少年の口にいきなり親指をこじ入れた女は頬を一気に引き裂いた。
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