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家の一室を借り行われるアレックスとの問診。
来客室であるそこでローテーブルを挟みながら、ソファーに座る彼は穏やかに答えた。
先に精密検査を終えていた。その結果を映す手元のタブレットを見やり僕も穏やかに言った。
「そうみたいだね。部品取り換えもまだ必要ないみたいだし、回路も順調だ。今日は……そうだね。美鈴さんのリクエストがあった君の髪型変更くらいかな」
「そうですか。わかりました」
美鈴さんとはこの家の夫人である。もう齢四十にもなるが若々しく美しいその方は、五年前から変わらずこのアレックスを気に入っている。
彼女の事前リクエストによりアレックスの髪型変更が希望されていた。今のままだと少し長いので短くしてほしい、とのことだった。
確かに彼の前髪がやや目元まで伸びていた。より人間に近づけようと髪の毛が伸びるなんていう余計な機能をつけた仲間に少しだけ文句を言いたい気もするが。
「あの、東雲博士」
タブレットを一度机に置いたところで、アレックスは僕を呼んだ。開発者である僕たちを博士と呼ぶのは、そうプログラムでインプットされているからであった。
「何だい」
「聞いてほしいことがあります」
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