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 しかしその単純な感情も日を重ねるにつれ複雑な螺旋を描いていく。  己はロボットだ。人間に恋をするなんておこがましい。あの人の恋する瞳がこちらに向かないのなんて当たり前なのに、恐れ多いことを考えさせるプログラムが私には潜んでいるのです──アレックスはそう言い懺悔するように僕にこうべを垂れた。  アレックス。僕は神父でも、ましてや神でもないんだよ。 「確かに恋愛プログラムはちいっとばかり組んではあったが」  有明はそう呟き、自身もコーヒーサーバーに手を伸ばした。  そう。彼が言うように我が社で扱うロボット全てに「恋をする」というプログラムを実は入れている。それは人間により近くというコンセプトゆえの計らいで、しかし発動するかどうかはそのロボットと持ち主との関係性により変わるのだ。  このプログラムは何も僕たち研究員のお遊びではない。  好意を持たれることは承認欲求を大きく満たしてくれ、持ち主にとっても好評なのだ。ほら、ペットの犬が尻尾を振ってじゃれてくるのが愛おしくなるのと同じだ。恋をされることは自尊心を満たすことにうってつけの感情なのである。 「でも『嫉妬』なんてのは出ないはずなのにな」     
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