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有明のまっすぐな瞳はどこかアレックスに似ていて、僕の心の内をざらりと撫でてくるようだ。そういった強い瞳。それは見られる立場からしたら、どんなものなのだろうか。
「……愛菜さん」
「え?」
「今日、愛菜さんとの結婚記念日なんだろう」
「あ、そうなんだよ」
僕が振った話題にすぐに有明はころっと態度を変えてくれる。いやきっと、今日はこの話題をしたかったのだろう。口の端をあげて笑う。
「だから今日は悪いけど早めに帰るぜ。レストランも予約しているんだ」
「お店はどこ?」
「フォセットだ」
「僕が教えた店じゃないか」
子どものように笑い有明は「いい店教えてくれてありがとな」なんて言ってくれた。何も知らずに屈託無く笑う彼は、宣言通りにその日は仕事を早く切り上げて帰ってしまう。
きっと幸せな時間を愛する人と過ごすのだろう。残された僕は1人チェアを鳴らした。
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