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たどり着いた地下倉庫は既にもぬけの殻だった。
「くそ、一足遅かったか」
アドスは壁にこぶしを叩き、悔しがる。
「これで本当に手詰まり、か」
「あ…そういえば、お父さんが作った船がある」
ケイネスは何かを思い出したように、奥に一行を連れていく。
広がった先にあったのは、荒波を超えるために作られた海に浮かんでいない一隻の船であった。
「これは、漁船かなにかか?」
バルトレイトは大きな船を眺めながらつぶやいた。
「うん。お父さん、漁師だったんだ…」
ケイネスは元気のない声で答える。
「漁師だった?」
その問いに答えたのはケイネスではなく、ルードッシュだった。
「俺はよく知ってるよ。シェイルさんの旦那さんは、優れた漁師でな、リンデールでは一番の稼ぎ頭だったんだ。これから俺たちが向かうトナバール海流でシェイルさんの旦那さんは亡くなったんだ。船だけは無事だったんだけどな」
「そう、だったのか。……この船、使えないだろうか」
バルトレイトは船の強度を確認し、悩みながらも言葉にしたのだった。
「えっ?」
ケイネスは不意をつかれたように驚いた。
「今考えられる唯一の乗り物だ。これがあればトナバール海峡に向かえるかもしれない」
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