第1章

2/2
前へ
/2ページ
次へ
スモーキーは咳き込んでしまうため辛い物が食べられない。 必然的とは言えないが、かなりの甘党である。 ある日、ピーが持って帰ってきた酒のパッケージに「甘口」と書いてあった。「甘党なら」とスモーキーにその酒を呑ませたことがあった。 今まで酒に縁の無かった俺たちはスモーキーがあそこまで酒に弱いだなんて知らなかったんだ。 ・・・ 「なあ、タケシ、これ貰ったんだけど」 と言ってピーが俺に差し出してきたのは、酒だった。 「酒って、なんで」 「いや、今日、山王商店街行ったんだけどよ、昼飯食いに入ったITOKANっていう店で貰った」 「だから、なんで」 その店にいたショッキングピンクの服を着た、苺美瑠狂と言うグループの頭の順子という女に惚れ込まれ、手土産に持たされたそうだ。 「お前がルードだって知ってんのかよ」 「さあ、知らね」 問題が一つ解決したところで、残ったこの酒。 俺たちはあまり酒に慣れていない。 「消毒用にでもするか」 ・・・ そうは言ってみたものの、矢張り酒とはどんな物なのか、気になる。 気になって寝れない。 夜中、こっそり寝床から忍び出て酒を置いた場所へ向かう。 案の定 「ピー、居たのか」 「あ、タケシだ。やっぱ来たんだ」 あちらも同じことを考えていたようだ。 「少し呑んでみっか」 器を二つ用意して、少しだけ酒を注ぐ。 「こういう時って乾杯するらしいぞ」 とピーが言うので、二人の晩酌に乾杯をした。 器同士がぶつかる乾いた音が星もない真っ黒な闇に吸い込まれていった。 その時、真後ろから物音がした。 「…スモーキー」 「スモーキー、甘党だったよな、少し呑んでみねぇか」 これ、甘口なんだよ、と酒の瓶を掲げ尋ねると、スモーキーがこくりと頷いたので、俺は自分が酒を呑んだ器を軽く濯ぎ、少しだけ酒を注いだ。 「これ、残ったら消毒用にするつもりなんだ、はい、どうぞ」 酒を注いだ器をスモーキーに渡した。 その器にスモーキーが口をつけてから、そこからはスローモーションで世界が見えたような気がした。 嘘のように耳まで顔を真っ赤にしたスモーキーは、その後、倒れた。 「「スモーキー!?」」 俺らはスモーキーがここまで酒に弱いだなんて知らなかったんだ。 その後、俺らはスモーキーを担いで寝床まで行き、水を枕元に置き、つきっきりで看病?をした。 翌朝、スモーキーは昨晩何があったのか憶えていないようで、必死で謝るピーと俺を見ながら首を傾げていた。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加