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「お嬢ちゃん、いったいどこでこの文字を覚えたんだい?」
ようやく螺子巻書店の主人は尋ねることができました。
「ずっと昔から知っていたような気がしただけ。お勉強は嫌い」
すましたように彼女は答えました。
「お父さんとお母さんはどこに?」
「いない」
「迷子なのかい?」
「違うよ」
昼下がりの本屋街を歩き回ったリトル・ルーシカの中で、ふと一つの結論のようなものがこのとき出来上がったのでございます。
「私はたぶん、さっきまでいなかったの」
「うん?」
「さっきまでいなくて、たぶんマザーグースの駒鳥(ロビン)をボビンって言っちゃったとか、かくれんぼでなかなか見つけてもらえなかったとか……そういう何かのささいな手違いでぽんと押し出されてしまったの、こっちに」
螺子巻書店の主人は返事に困ってしまいました。
「お嬢ちゃんは、変わった迷子だなぁ。名前はなんて言うんだい?」
今度はリトル・ルーシカが虚を突かれる番でした。手に持った本を眺め、それからややあって、彼女は言いました。
「ルーシカ。たぶん、私はリトル・ルーシカ」
そうして頭に乗せていたハンチング帽を、彼女は不器用そうに被りなおしました。
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