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それ以来、この幼ささえ感じられる傲慢さを持った、しかしどこか抜けているハートマン氏は、何度も螺子巻書店へ足をお運びになりました。書店の主人から滅びゆく文字文明の講釈を受け、そこでひらめいた新しい論をリトル・ルーシカに吹っかけては論の穴を突かれ、
「次は、次こそは!」
と恥ずかしさに赤面しながら、高級そうな革靴の音を立てて早足で去ってしまうのでございます。その後ろ姿を見送るたびに、リトル・ルーシカは申し訳ない気分になってしまいました。
「お義父様、私、間違っているの?」
「そんなことはない。彼には、お前のような薬が必要さ」
不安げな表情を浮かべるリトル・ルーシカの頭を、書店の主人は深いしわの入った手で優しく撫でました。
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