20年後の初恋

4/37
206人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
* * * エンジン音の静かな車に乗り換えたばかりの我が家の車。 新車の香りが残る車内には、緊張感が張り詰めている。 今夜の運転手は、私。東海林 夏鈴が勤めています。 高速道路を時速100キロで走行中・・・。 バックミラーをチラッと見ると、頭同士をくっつけてうたたねする双子の兄妹の寝顔が並んでいた。 ドライブのBGMは洋楽が流れている。今年、流行しているアメリカ人の女性シンガーの力強い歌声が耳に心地良い・・・。 助手席で長い足を投げ出して、だらしない姿勢でそっぽを向く夫を見ると背中が怒っていた。 吐息と外気の差で曇ったガラスに、指先でなにやら落書きをしてる。何を書いているかまでは、今の私からは見れない。なぜなら、運転中だから。 晴馬は少年。 精神年齢は出会った頃から、たぶん変わってないような、そんな可愛い人。 だけどね。 どうして私が怒られなくちゃいけないのか、わからないの。 どうして晴馬がそんなに怒っているのかも、わからないし。 お願いだから、わかるように説明して欲しいわ・・・。 拗ねている襟足に左手を伸ばしたら、とがらせた唇がこっちを向いた。 「・・・なに?」
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!