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エンジン音の静かな車に乗り換えたばかりの我が家の車。
新車の香りが残る車内には、緊張感が張り詰めている。
今夜の運転手は、私。東海林 夏鈴が勤めています。
高速道路を時速100キロで走行中・・・。
バックミラーをチラッと見ると、頭同士をくっつけてうたたねする双子の兄妹の寝顔が並んでいた。
ドライブのBGMは洋楽が流れている。今年、流行しているアメリカ人の女性シンガーの力強い歌声が耳に心地良い・・・。
助手席で長い足を投げ出して、だらしない姿勢でそっぽを向く夫を見ると背中が怒っていた。
吐息と外気の差で曇ったガラスに、指先でなにやら落書きをしてる。何を書いているかまでは、今の私からは見れない。なぜなら、運転中だから。
晴馬は少年。
精神年齢は出会った頃から、たぶん変わってないような、そんな可愛い人。
だけどね。
どうして私が怒られなくちゃいけないのか、わからないの。
どうして晴馬がそんなに怒っているのかも、わからないし。
お願いだから、わかるように説明して欲しいわ・・・。
拗ねている襟足に左手を伸ばしたら、とがらせた唇がこっちを向いた。
「・・・なに?」
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