1人が本棚に入れています
本棚に追加
「ねぇ、かえろうよ。ゆき、ふってきちゃったよ」
「え~」
「おかあさんたちにおこられるよ!」
「ぼくもかえったほうがいいとおもう」
「え~。……じゃあ、さいごにすべりだいすべってから」
しもた!
蜂屋! やめとけ!
梅村さん、なに言うてるんですか? 池に落ちてしまいますよ!
「みつるくん!」
ああ、ほら……。
充!
「た、たすけ」
「みつる。ど、どうしよ」
タケ……。
「へ?」
人を呼んでくるんだ。友達助けたいなら、全力で走れ!
「わかった!」
「え?」
「ゆずちゃん、ぼく、おかあさんたちにしらせてくる!」
「え? え? わたしは?」
柚ちゃん、あなたは充君にバタバタしないように伝えて。動かなければ人は浮くんよ。
「うん。え?」
大丈夫。大丈夫。柚ちゃん、頑張って。
「うん。ゆず、がんばる。……みつるくん、バタバタしないで! そしたら、うかぶって!」
「なに……? ガボッ! ゆず? ゲッ!」
蜂屋! 遠慮せず、行け。お前んとこの坊主もこれで池が危ないってわかったはずだ。大人の忠告ってのを、ちょっとは聴く気になるだろ。
……そうですな。
「よかった! 充! 本当によかった!」
「頑張ったわね、充君」
「ありがとうございます。タケ君も柚ちゃんも、ありがとう」
充君、お母さんの涙を不思議なものでも見るみたいに見ていますね。
良い薬だ。
わしはやっぱり過保護やったんやろか?
痛い思いをしなければ、いつまで経っても、同じことを繰り替えす。お前がなんでも助けてしまったら、あの坊主はそれが自分の力なのだと誤解するかもしれん。
耳が痛いですわ。でも、可愛くて仕方ないんや。わしは充が生まれる前に死んでもうて、抱っこもできへんかった。なんの計らいか、充の守護霊をさせてもらえることになって、嬉しかったんや。この子は絶対に守るんやって、わしは……。
私も梅村さんも、蜂屋さんの気持ち、ようわかっております。私達も蜂屋さんと同じ気持ちですよ。
「おかあさん、ごめんなさい」
今はたくさんの人に助けてもらって生きているこの子達も、いずれ、助ける側になります。この子達に大きな災害が降りかからないよう、見守っていきましょう。
俺達がいれば、こいつらは最強だ。だが、まずは自分が弱いことを知らなければな。
そうですな……。
最初のコメントを投稿しよう!