さよならの先には

15/21
前へ
/450ページ
次へ
勢いよく顔を上げて、ニッコリと笑う。 ゴシゴシと涙を拭って、震える唇を持ち上げて、ニッコリと。 そんな私を見て、驚いた様に目を見開いた彼だけど、構わず言葉を落とした。 「私、九州に転勤になったの」 落ちた言葉は震えてなかっただろうか。 ちゃんと、言えただろうか。 目を見開いて瞳を揺らす彼に、変わらず微笑みかける。 大丈夫だという様に。 心配しないでと、伝わる様に。 「来月から、博多支所に異動になったの。私九州って行った事ないんだよね」 「それって・・・・・・」 「どんな所なんだろ。少しだけ楽しみなの」 尚も変わらずニコニコと笑う私の肩を、突然掴んだ彼。 瞳を歪めたその姿を見て、悲しくなる。 それでも、頬に笑顔を張り付けてニッコリと笑う。 「今回の事が原因で・・・・・・?」 擦れた彼の声を聞いて、微かに瞳を細めた。 その姿を見て、どうか泣かないでと思う。 辛い気持ちは、全部私が引き受けるから。 元の幸せな生活に戻って、誰よりも幸せでいてと思う。
/450ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1694人が本棚に入れています
本棚に追加