1691人が本棚に入れています
本棚に追加
「――じゃぁ、頑張ってね。柚葉」
「ありがとう、萌」
ゲートの前で、互いに微笑みあう。
しばらく萌にも会えないんだと思うと、途端に寂しくなった。
「頑張るんだよ!! 柚葉!!」
「ふふっ。早く遊びに来てね」
バシっと私の肩を叩いた萌にケラケラと笑う。
天真爛漫な萌と一緒だと、やはり前向きになれた。
誰よりも私の事を分かってくれて、一緒に悩んでくれた。
「ありがとう」
小さくそう呟くと、萌が首を傾げて目を瞬いた。
本当は聞こえているくせに、と思いながら下を向いて小さく笑う。
「いってくるね」
最後にヒラリと片手を上げて、背中を向けた。
途端に寂しさが湧き上がってきたけど、抑え込む様にグッと瞳を閉じた。
見えるのは、何もない世界。
私が今から、向かう世界。
彼のいない、世界。
「ばいばい」
この日、思い出全部胸に閉まって。
私は彼の元を去った――。
最初のコメントを投稿しよう!