歩いていく

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「あ、萌~? うん、元気~。今日ね、萌のお気に入りの俊君がね、またやらかしたの」 『なになに~? 相変わらず可愛いヤツね』 お昼時、屋上にある小さな庭園に腰かけて青空の下サンドイッチを頬張る。 電話口の向こうには、何度か話をしたら、いつの間にかお気に入りと化した『俊君』の話を楽しみにしている萌がいた。 「実はね、今日――」 世界は穏やかだ。 暖かな日差しと、真っ青な空。 柔らかい風と、綺麗な花。 そして、色鮮やかな緑。 ――だけど、心は穏やかだ。 少しも心を締め付けられる事なく、その緑を見つめていられる。 笑っていられる。 時間は思い出を、ただの綺麗なものに変えてくれた。 萌の言っていた通り、ただの楽しかった思い出に。 だから今日も、私は笑っている。 ――・・・・・・東京を離れてから、気が付いたら2年が過ぎていた。
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