歩いていく

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隣の席が空いたベンチで1人佇む。 口から零れるのは、優しい歌。 誰かを愛して、愛される歌。 離れる事はないと疑わない曲。 季節は廻っていく。 桜の季節も、緑の季節も、紅葉の季節も、雪の季節も。 巡り巡っていく。 心は穏やかなままだ。 飛行機でこの地に着いてから、ずっと。 泣き方も、もう忘れてしまった。 それほど、心は穏やかだ。 「元気かな」 ふと、思い出す事はある。 それぐらい許してくれるだろう。 元気かなって案じるくらい。 思い出の中の彼の姿は確かなのか分からない。 笑う顔も、怒った顔も、困った顔も、悪戯っ子の様な顔も。 声も、手も、広い背中も。 季節が巡る度に、色褪せていった。
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