歩いていく

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◇ 「お疲れ様でしたー」 次々に落とされる言葉に、ニッコリと微笑む。 徐々に少なくなっていく社員達。 ふと時計を見れば21時を過ぎていた。 季節は、秋終盤。 真っ赤に染まった紅葉も、すっかり落ちてしまった。 世界はすっかりクリスマスを待ちわびる様にキラキラと輝いている。 冬は好きだ。 色とりどりの光が木々を覆って、鈴の音が街を覆う。 凛とした空気に、眩く輝く夜空が一層綺麗に見える気がした。 だけど、この季節になったら思い出す。 彼と過ごした、あの日々を――。 ◇ 「まだかなぁ」 デスクに座りながら、大きな溜息を吐いて1人愚痴を溢す。 みんな帰ってしまって、見事に最後の一人になってしまった。 今日は本社から人が来て、共同のプロジェクトの話をする。 本社の人となんてどこか気が重いし、別の人が引き受けてほしかったけど、そんな我儘言えない。 本当は午後一の打合せのはずだったのに、台風の影響で出発が遅れに遅れて、さっき着いたとの事。 だったら明日にすればいいのにと思いつつも、早急に話たいとの事だったから今こうやって待っている。
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