歩いていく

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だけど、思う。 去年の冬に別れたのならば、もう離婚して一年経つ。 一年も、経った。 彼に少しでも私と同じ気持ちがあったのなら、今私が思った様な感情があったのなら、会いに来てくれるのではないだろうか。 九州だという事も、会社が変わらない事も彼は知っているはずだから。 会おうと思えば、会えた。 だけど、会いに来ないという事は、そういう事。 そういう事――。 ふっと、自嘲気に笑う。 また、バカで弱い私が優しい夢を見たな、と。 別れたのなら、迎えに来てくれるんじゃないかって。 会いに来てくれるんじゃないかって、一瞬でも期待した。 そんな綺麗な物語、絵本の中だけだってまだ気づいていない。 忘れようって、決めた。 思い出にしようって、決めた。 揺らいではいけない。 穏やかで変わりのない、この世界を私は手放してはいけない。
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