夜景

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「へぇ、変わってるな」 「木の匂いがしますよ!」 「お、本当だ」 「なんだか癒されますよね。変わったデザインで可愛い」 いくつか置いてあるソレを手に取って見比べる。 少し茶色が混ざったものや、すべて明るい色で統一されたものだったり様々だ。 どれも可愛くて、まさしく私のストライクゾーン。 そっとケースを鼻の近くに持っていき、匂いを嗅ぐ。 胸いっぱいに広がった木の香りに、思わず頬が緩んだ。 こういった自然に触れると思い出す。 まだ私達が不倫の関係だった頃に訪れた、あの緑の世界。 切なさと寂しさに埋もれていたけど、それでも幸せだった日々。 そんな懐かしい日々を思い出していると――。 「それにするか」 聞こえた声に、隣を向く。 すると、優しく瞳を細めながら私と同じ様にケースを手に持っている一ノ瀬さんがいた。
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