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◇
「合コンパーティー?」
眉間に皺を寄せて言葉を反復した俺に、友人の『松田』はニヤリと笑った。
そして、自分の携帯を俺に手渡して、嬉しそうにビールジョッキを持ち上げた。
何だ? と思いながら携帯を受け取って画面を見ると、その『合コンパーティー』の概要がのっているHPが開かれていた。
ザっと目を通すと、どうやら都内のホテルで夜景を見ながらの立食パーティーらしい。
「来週あるんだ。来るだろ?」
「来るだろ、って、俺既婚者だけど」
「バレなきゃいいだろ」
「いやいや、行かないから」
「どうせ暇だろ?」
「暇だけど、こんなもんに出る程、暇じゃねーよ」
呆れ顔でそう言って、携帯を松田に返す。
すると、まるでリスのように頬を膨らませた松田が、向かい合う席の反対側から前のめりになって俺の手を掴んだ。
思わずギョッとして振り払おうとするが、必死な形相の松田は更に俺の手を引いて体を近づけてきた。
「な~頼むよ~、俺もそろそろ結婚してーんだよ」
「だったら独身の奴と一緒に行けよ!」
「もう周りに独身の友達なんていね~んだよ」
「だからって既婚者誘うなよ」
「既婚者で時間に融通効くの、お前しかいね~んだよ」
そう言って、泣きついてくる松田の手を必死に振り払う。
それでも、松田は諦める事なく、俺の隣の空いていた席に移動してきた。
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