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「結婚して、良かった事?」
「そ~、何?」
「なんだろうな」
「ちょ、お前、誤魔化すなよ~」
「誤魔化してない」
「な~、何が一番幸せ~」
今日は酷く絡んでくるな、と思いながら苦笑いを浮かべる。
のらりくらり受け流そうと思ったけど、松田は許してくれない。
「なんだろうな」
追加注文を諦めて、残っていたビールを流し込みながら考え込む。
それでも、思い出せるのは真っ暗な部屋だけで、『幸せ』な光景は思い浮かばなかった。
「別に、独身の時と変わらない」
「んなわけねーだろ! あんな美人で仕事も出来る完璧な嫁さん貰っといて!」
『完璧』
その言葉に、視線が下がる。
確かに、彼女は完璧だと思う。
同じ会社に勤めていたけど、その成績はズバ抜けていた。
現に、今は海外支社でエースとして仕事をしている。
結婚する前から、仕事は変わらず頑張りたいと言っていた彼女は、見事に有言実行を果たしている。
そして、大学時代はミスコンで優勝経験があるとかで、その容姿は誰が見ても『綺麗』だと思う。
仕事も、容姿も、完璧。
誰もが羨む、女性。
そんな人と、俺は結婚した。
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