その手が離せなくて 【番外編完】

１人

出会いは、もちろん職場でだ。

同じチームで仕事をする事になって、そこで初めて出会った。

社内でも有名だった彼女の事を、俺は以前から知っていた。

実際話す事は初めてだったけど、周りとは違うオーラを放つ彼女は、やはり『特別』だった。

それでも、一緒に仕事をしていく内に彼女の『良い部分』も『悪い部分』も見るようになった。

俺にとって、高嶺の花だった彼女が、普通の人と同じになった。

それから、何度か２人で食事をするようになって、数か月後に付き合い始めた。

そして、１年程付き合った後、結婚した。

周りからは、随分羨ましがられた。

誰に紹介しても、そうだった。

そんな素晴らしい人と結婚できた俺は世界で一番幸せ者だと思った。

だけど、結婚して数カ月後、彼女の海外勤務が決まった。

以前から希望していた所だったから、彼女は２つ返事で日本を発った。

俺への相談は無かった。

一緒に行こう、という言葉も無かった。