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そこからだと、思う。
俺達が少しづつ離れていったのは。
結婚前から、お互い仕事に生きていた。
それを誇りに思っていたし、そんな部分に互いに惹かれていた。
だから、仕事を頑張る彼女を応援したい気持ちはあった。
だけど、胸に芽生えるこの気持ち。
『寂しい』と思うのは、俺の器が小さいからだろうか。
周りの既婚者の友人達は、愚痴を言いながらも休日は家族で過ごし、穏やかな日々を送っていた。
子供が出来れば、更に幸せに。
嫁が体調を崩せば、更に絆を深め。
大型連休には、家族で旅行に。
友人の『彼女』が、どんどん『家族』になっていく様を、俺は見続けた。
そして、自分達夫婦の関係に疑問を持ち始めた。
彼女に『俺』は必要なのだろうか。
もはや一緒の時間すら過ごしていない俺達は、家族なのだろうか。
「俺の家は、家族っていうより『戦友』って感じだからな」
苦し紛れに落とした言葉は、我ながら的を得ていたと思う。
家族でいる事よりも、仕事を取った俺達は、きっと戦友。
同じ場所で戦っている、そんな存在。
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