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「へぇ~」
俺の言葉を聞いて、納得いかないと言った顔でそう言った松田。
それでも、最後に小さく呟いた。
「それって、少し寂しいな」
TRRRRR。
帰り道、不意にポケットの中で携帯が鳴った。
徐にそれを取り出すと、先程まで話題の中にいた人だった。
「もしもし」
『もしもし、高司?』
聞こえたのは、久しぶりに聞く声。
『嫁』の声。
「どした?」
『メール見た?』
「見た。帰国、遅れるんだろ』
『そう。どうしても片付けなきゃいけない仕事が出来てさ』
「相変わらず忙しいんだな」
『たぶん、帰国しても2週間程で帰ると思う』
「そっか」
『あ~、あとね、帰国中に高校の友達の結婚式があってね、しばらく実家にいると思うから、家にいれるのは3日くらいだと思う』
「分かった」
『じゃ、仕事に戻るね』
「体に気をつけて」
『は~い』
そう言うや否や、呆気なく切れた電話。
画面を見ると、通話時間は1分程だった。
無意識に出る、溜息。
視線を携帯から持ち上げると、目の前を楽しそうに歩くカップルが見えた。
身を寄せ合って笑いあい、幸せそうに俺の前を過ぎ去っていく。
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