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◇ 「おー! 一ノ瀬、こっちー!」 開催場所であるホテルの最寄り駅で待ち合わせする。 改札を出た所で、嬉しそうな松田の声が聞こえて顔を上げた。 「いや~緊張するな~」 着いて早々、俺の肩をバシバシ叩きながらそう言う松田。 合コン仕様なのか、いつもよりお洒落している。 それでも、子供みたいにソワソワしている姿を見ていると笑えて来た。 「松田、緊張してる?」 「当たり前だろ! ってか、お前が落ち着きすぎ!」 「いや、だって俺は飯食いに行くだけの目的だから」 「確かにそうだろうけど、もっと、こう、ソワソワしろよ!」 こうやって馬鹿な事を言い合っていると、学生時代に戻った気分になる。 何もかもが楽しくて、未来がいろんな方向に延びていた、あの時間。 あの頃は気づかなかったけど、今思えば、かけがえのない時間だった。 戻れるなら、戻りたい。 最近は、酷くそう思う。
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