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それから、開催場所であるホテルに到着して、バタバタと合コンパーティーが始まった。
大きな宴会場を貸し切っている様で、着飾った男女が煌びやかな会場の中で楽しそうに会話を繰り広げていた。
もちろん、俺は出会いなんて求めていないから、出される料理に集中。
家で自炊する事が少ないから、こういった場所で普段取れない栄養を確保する。
野菜だったり、魚だったり、そんなもの。
「あの~、ご一緒してもいいですか?」
少しお腹も満たされた頃、松田と適当に喋っていると2人組の女性に話しかけられた。
2人とも少し恥ずかしそうに俯きながらも、笑顔を浮かべて会話を切り出した。
そんな彼女らに、松田はニッコリ笑って頷く。
さっきまでソワソワしていたのに、こいつは昔から本番には強いんだ。
「一ノ瀬です」
営業スマイルを浮かべて、自己紹介をする。
それでも、彼女達の間に一線を置く。
どことなく、申し訳なく思いながら。
それから、お互いの事を探り探り話していく。
どこか懐かしくも感じる、この駆け引きのような会話。
自分をどうアピールするか脳内で考えながら、言葉を選んでいく。
それでも、そんな偽りの自分を演じる事に疲れて、俺は早々に会場を後にした。
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