1人

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「はぁ」 無意識に出た溜息が、窓の外に消えていく。 高層階のここからは東京の夜景が一望でき、眺めは最高だった。 それでも、綺麗だと心から思えないのは、心がすさんでいるからだろうか。 それとも、空っぽだからだろうか。 あの会場にいる人達と、俺達は違う。 未来がもう決まっている俺と、可能性に満ちた人。 結婚を望む人からすれば、俺なんて贅沢で、何言ってんだってなると思うけど、結婚したからって全て人生が順調にいっているとは限らない。 結婚したからって、幸せだとは限らない。 そう思ってしまう俺は卑屈で、酷く寂しい男なのかもしれない。 ブラブラとホテルを気分転換に歩き回って、再び会場のある階に戻ってくる。 大きな扉の向こうでは、僅かに楽しそうな笑い声が響く。 戻りたくないな、と思いながらも、足を前に出した。 その時。 「――」 不意に視線の端に映った、青。 真っ青な水槽が横に大きく伸びており、世界に色を添える。 その水槽に引き寄せられるように、足を前に出す。 そっとソレを覗き込めば、色鮮やかな魚が縦横無尽に泳いでいた。 あまりにも綺麗なその光景に時間も忘れて魅入ってしまう。 それでも。
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