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彼女を失って、再び元の味気ない生活に戻った。
空っぽの生活に戻った。
家に帰っても、誰もいない生活。
鳴らない携帯。
誰からも、愛されない日々。
――限界だった。
「離婚しよう」
そう切り出したのは、彼女が九州へ行って数か月後の事だった。
既に判を押した書類を見せれば、彼女は表情も変えずに俺を見つめた。
「あの女の所へ行くの?」
「――」
「そんな事、絶対に許さない!」
そう言って、彼女は髪を振り乱して暴れた。
彼女のこんな姿、始めて見た。
いつも冷静沈着で、物事をしっかり見定める彼女が。
だけど、こうしてしまったのは、俺自身。
変えてしまったのは、俺自身。
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