11 ポトスの呪い(つづき)

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少し出遅れての昼休みになった、この日。 いつも通り、最上階でエレベーターを降りた未波の目に、 偶然、ラウンジから駆け出てくる辻上の姿が映った。 しかし、明らかに未波に気付いてハッとした辻上が駆け寄ったのは、 彼女ではなくエレベーター。 間違いなく、二人の視線は合っていた。 それなのに彼は、分かり易いほど明らかに視線を外した。 そして、声を掛ける間もなく、彼は、未波が降りたばかりの箱の中へと飛び込んだ。 えっ……。 エレベーターは、振り返ることもない彼の背中を見つめる未波の目の前で、そっと扉を閉じた。 それと同時に、彼女の全てが凍り付く。 未波は、ザワめく昼の賑わいに包まれながら、エレベーターの前に立ち尽した。 まるで苦いデジャヴのように、頭も、心の中も過去の失恋同様に 真っ白にポッカリとした空白になっている。 だが、辻上が拒絶のオーラを纏っていたことだけは、はっきりと残っている。 そして、微かに震える彼女の口から小さな呟きが零れ出た。 なんで――。 だが、当然それに答える者はなく、 呟きは、昼休憩の雑然とした物音の中に消えていった。
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