28人が本棚に入れています
本棚に追加
だが、いつもならば軽口の一つや二つが繋がる本間が
苦笑だけに留めたということは、痛い空気でも纏っているのだろう。
そしてそんな自分には、溜息しか零れない。
しかし、そんな日々を過ごしつつも、
やっぱり未波は、辻上に連絡を取れないまま。
悶々とした時は流れ、とうとうバレンタインを迎えることになった。
『智樹くん、明日のお昼は早番? 遅番?』
バレンタイン前日の夜、帰宅してから絹矢に短くメールを打った。
すると、メールは苦手という彼から、すぐに電話が掛かってくる。
「もしもし、未波ちゃん? 俺、明日は、松本さんと一緒に遅番」
「じゃあ、席取っておくから、30分だけ一緒に食べない?」
うん!
元気に頷いた絹矢とは、短いやり取りで、すぐに電話を切る。
そして未波は、ベッド脇の座卓の上に並んだ同じ紙袋を眺めて、
小さく溜息を零した。
最初のコメントを投稿しよう!