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もちろんこれも、辻上との約束違反になることは、十分承知していた。
だが、二人にとって初めてのバレンタイン。
チョコレートくらいは許されるだろう。
それに、絹矢の目も気にして、チョコレートは全員同じ物にもした。
ただ辻上の袋の中には、こっそり合格祈願のお守りを忍ばせてある。
未波は、低いテーブルの上に並んだ五つの小さな紙袋の一つに、
そっと指を滑らせた。
レイ、どうしてるかな。
そして、心の中で呟いた途端、ふわっと視界が涙で滲む。
しかし未波は、それを必死で呑み込んだ。
どうせポトスが増えるなら、その時まで涙はとっておこう。
しかし、そう呟いてベッドに入ったこの夜も、
やはり未波は、あまり眠ることは出来なかった。
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