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「目を離したら、レオナがいなくなって、消えてしまう気がするんです」
悲しそうな顔でそう告げたのだ。
あの表情は、以前の出来事だけではないとカイルはその時確認した。
もっと何層にもわたる降り積もった後悔。重すぎるレオナへの思い。
多分あれの影響だろうなとカイルは見当がついていて、それ故に、あまり強く言えない。
そのようにしてしまったのはカイルにも責任があるのだから。
代わりに、カイルは別の話をすることにした。
「リゼル、実は俺は、昔、レオナが嫌いだった」
「え?」
その発言に、不思議そうに声を上げたリゼル。ようやく表情が変わった愛弟子であり弟分にカイルは、
「初めは裏切りもあって怒りもあったが、ある事があって俺は考えを変えた」
「師匠、何を言っているのか分かりません」
「分からなくていいし、そのうち分かるかもしれないし分からないままかもしれない。分からないままの方が本当はいいのだけれどな」
「……分かりました。師匠がそう言うのでしたら、そうなのでしょう」
レオナの事なのに大人しく下がるリゼル。
薄々何かを感づいているのかもな、とカイルは思いながら更に続ける。
「そのある事とは、俺がスノーレットに会った事だ。スノーレットと会って、何だこのあざとい生き物は! と思った。あれは衝撃的だった」
「……俺にとってレオナはあざとい生き物です」
「だろうな。まあ、今は俺もスノーレットもいるし、そこまでリゼルが気張る必要はないぞ。それに俺の実力を疑うのか?」
そう冗談めかしてカイルが問いかけるとリゼルが考え込むように少し黙ってから、
「そうですね、今は俺よりも強い師匠もいますし、スノーレットさんもいる。上手くいくといいのですが」
「あまり不安ばかり口にしていると禿げるぞ」
笑いながら口にした悪口にリゼルは少し黙ってから、
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