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リゼルはどういうわけか上目遣いで僕がお願いをすると、いう事を聞いてくれることが多い。
だから僕も今回はその戦略をとってみたのだ!
けれど、今回ばかりはリゼルも違ったらしい。
うんざりとしたように僕の方を見て、
「そうだな、頬にキスしてくれたら考えてやる」
どうせやりっこないだろうというリゼルの挑発。
リゼルが意地になっていて、絶対に僕とは一緒に買い物に行く気はないらしい。
でもそれならば、こちらにだって考えがある。
僕はそっとリゼルの頬に顔を近づけて、
「え?」
驚いたような声を上げるリゼルの頬にキスをした。
柔らかくて暖かいそこに軽く触れるだけのキス。
それだけだったが、
「リゼル、顔が凄く真っ赤になっているけれど……」
「だ、だってまさか本当にするなんて……」
「でも約束は約束だから守ってね」
僕がそう告げるとリゼルは、僕に何かを言い返そうとするも、何も言えなかったらしく一度黙ってから、
「わ、分かった。約束だから」
「うん、約束だから。よし、明日はいつも通りの起床だから。休みだからって寝坊は駄目だよ」
「……分かった。約束だから」
渋々といったように答えるリゼル。こうして僕はリゼルとの明日の約束を取り付けたのだった。
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